導入ストーリー(学習塾編)
教育現場で動画をうまく活用するには!
第5章: 学習塾でオンデマンド授業を始めるには?≪オンデマンド配信実践編≫
学習塾でオンデマンド配信を始めるにあたって重要なのは、導入目的の明確化とその目的に合った動画配信サービスを選ぶこと。
前回の「学習塾でオンデマンド授業を始めるには?≪オンデマンド配信準備編≫」では、導入効果を明確にするための5W2Hと、どのような動画配信サービスが自塾に適切かを選ぶための「8つのチェックポイント」をご紹介しました。
今回は、学習塾がオンデマンド配信を運用していく時に留意すべき点について、実際の活用事例を見ながらお伝えしていきます。
個別指導や反転授業に最適な、オンデマンド配信型授業とは
昨今では、個別指導に力を入れる学習塾が増加しています。従来の集団指導から個別指導への転換を迫られている学習塾も少なくないでしょう。しかし、個別授業への拡大意欲はあっても、教室のスペース確保が困難といった物理的な問題で、断念せざるを得ないケースも見られます。欠席者への補講対策も同様に、悩ましいものです。
こうした状況には、オンデマンド配信を活用した授業が効果的です。本来の授業に欠席した生徒への補講は、アーカイブ化した授業のビデオを生徒の自宅やサテライト教室などに配信することでクリアできます。
また、生徒の自宅を「新たな教室」ととらえて、オンデマンド配信サービスを活用した個別授業を進めることもできるでしょう。注目を集める新しい学習方式「反転授業」を実施することも可能です。 個別指導が可能になれば、生徒の学力は向上し、進学率にも反映されてくるでしょう。こうした環境を整えることは、学習塾の付加価値を高め、生徒獲得にも有効なアピールポイントになります。
実際の導入事例にみる、オンデマンド配信運用のコツ
学習塾を広く運営するS社では、生徒の学力を上げるために、特に小中学生を対象に積極的にオンデマンド授業を活用しています。もともと教室での授業に対して、生徒からさまざまな悩みが寄せられていました。
- 1回で授業の内容を覚えるのが難しい
- わからない事があっても、先生に同じ内容の授業をやってもらえない
- 先生に質問する時間がとれない
- 授業のビデオを見ながら復習したい
- 部活などで塾の時間に間に合わないことが多い
- 欠席した場合、振り替えして授業を受けなければいけない
このような生徒の悩みを解決する一つの方法として、インターネットを活用した授業に着目。もとより、受験生向けのオプション授業で解説動画の配信の経験もあったS社は、その時の課題を解決しながら、オンデマンドで授業を配信する方法を模索し始めました。
初めての動画配信では、
- 自社サーバで運用したことにより、アクセスの集中やサーバの老朽化で、通信がダウンするなどパフォーマンスが低下る
- 専用のスタジオを借り講義を撮影、編集も外注のため高コスト
といった問題が生じました。
そこで、オンデマンド授業の配信を始めるにあたり、
- 安定して配信できる強固な配信サーバ・ネットワークなどのインフラ整備
- 撮影や編集を外注せず自社内で対応、配信できる簡単なシステム
- 先生が授業と生徒の学習進度に集中できる環境
以上の3点を特に重視して、サービスを選定することにしました。
1.のインフラ面に関しては、
- 大人数のエンドユーザへのサービスの提供に実績がある
- 安定性と高品質なバックボーンを持つネットワーク環境
- 常に最新のバージョン更新とセキュリティ対策
- 必要に応じて利用環境の規模を変更できる自由度
を選定基準に、クラウド型のサービスを導入しました。
2.のコンテンツ制作と運用に関しては、
- 自社内の簡易な機材で撮影し、最低限の知識で編集できること
- 塾への導入実績があり、講義映像作成のノウハウがあること
を選定基準に、パッケージサービスを利用しました。
3.の学習環境面に関しては、
生徒の受講履歴や学習内容、習得レベルがわかる「LMS(学習管理システム:Learning Management System)」機能を持つサービスを選択。対面ではない授業でも、先生が生徒一人ひとりの視聴状況や学習進捗、理解度を把握できるようにしたのです。
選択した動画配信サービスでは、家庭用のビデオ撮影機材で授業を固定撮影します。これにより、先生は普段の教室で、普段通りの授業に専念することができるようになりました。撮影された動画は自社内で編集することができるようになり、運用コスト抑制につながりました。さらに、生徒からの要望に応えて導入したLMSで、生徒の能力向上が認められました。こうしたことから、S社が運営する学習塾は価格競争にさらされることなく、順調に生徒数を伸ばしています。
オンデマンド配信による授業を行う学習塾、特に、小中学生対象に運用しているところは、まだまだ少ないのが現状です。黎明期の今始めることで、競合との差異化を図り、生徒や保護者に対して大きなメリットを提示することができるでしょう。