クラシックコンサートのライブ配信を、導入から視聴までサポートできるサービスが魅力
株式会社ぶらあぼホールディングスの新たな試みであるクラシックコンサートのライブ配信が、ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川県川崎市)で7月に開催された「フェスタサマーミューザKAWASAKI2020」の全17公演で実施されました。そのライブ配信にNTTスマートコネクトの「SmartSTREAM」を利用させていただきました。充実した動画配信システムとしての機能に加え、提案の段階から配信がスタートした後の実務に至るまで、幅広く手厚いサービスが魅力だと感じています。
導入の背景
充実した動画配信機能や、有料ライブ配信サービスとの連携に注目
コンサートのライブ配信プロジェクト自体は数年前から開始していました。今回のサマーミューザ企画は、新型コロナウイルスの影響が深刻になってきた4月中頃に始まり、決まったのは6月中旬だったかと思います。弊社はまだ配信事業のノウハウは少なく、短時間でストリーミング配信や有料課金視聴のプラットフォームを構築することはできません。そこで協力をお願いしたのが「SmartSTREAM」のサービスです。サービスを提供するNTTスマートコネクトとは以前から、ハイレゾ配信の実験などを通じてお付き合いがあったこともあり、スムーズにご提案いただくことができました。
「SmartSTREAM」は動画エンコードや配信システム、再生プレイヤーなど、動画配信に必要となる機能がワンストップで利用できますし、ニーズに合わせて、視聴者を限定した配信など柔軟に対応できます。特に有料課金配信の部分では、有料ライブ配信ができるチケットシステム「TIGET LIVE(チゲットライブ)※1」との連携が可能な点に注目していました。また、ライブ配信に重要なシステムの安定性の面でも、信頼感のあるNTTグループですので、とても安心できました。
※1:「TIGET LIVE」は株式会社grabssの商標です。
採用のポイント
配信のプロが現場で対応、徹底したフォローと提案に感謝
「SmartSTREAM」の担当者に、現場で対応に当たっていただける安心感が一番ですね。ライブ配信でノウハウがない場合、クラウド環境だけ構築してもらっても実際に運用する時、不安になると思います。現場にプロが同席してくれることが心強いです。17公演を続ける中で、配信状態を常にチェックしていただき、適切な音響で視聴していただくためのアドバイスもいただきました。高画質・高音質で配信しても、視聴できなければトラブルが起きてしまいますからね。
今回の配信では最後までしっかりサポートがあって、公演の最初こそ多少は運営も手間取りましたが、すぐに担当者間の意思疎通も円滑になり、スムーズにライブ配信を終えることができました。映像スイッチングや音声調整などのオペレーションの部分もカバーされていましたし、配信の根幹である現場機材や映像を伝送するネットワークについても具体的に提案いただき、まさに心強い味方でした。
さらに課題だった短い準備期間でのシステム構築が可能で、対応力も十分でした。もう「何もかもやっていただいた」と言っても過言ではないと思います。実際にスタート段階でも、どういった枠組みのシステムを構築していくのか、視聴サイトはどうするのかなどに加えて、課金認証に関係することまで提案してもらいましたので、手厚いフォローに感謝しています。
それと、お客さまからの問い合わせ対応は助かりました。視聴者から直接問い合わせが入る主催者さまへ、問い合わせ対応や回答内容について知見のある立場からアドバイスをいただけたことはとても心強かったです。単純な「配信サービスの提供元」としての立場ではなく、イベント全体を成功させる「チームの一員」として支えてくれる姿勢が、なによりも嬉しかったですね。
導入効果
全ての配信でトラブルはなく、ライブもファンから好評
クラシックコンサートのライブ配信は視聴者から高評価で、好意的なメッセージもいただきました。反響があると、とてもクオリティの高い配信を提供できたという手応えを感じますね。毎日の公演を安定して配信できましたので、成功と言って良いでしょう。地方からの視聴者も喜んでくださいました。都心との往来も慎重になる情勢が続く中、地方のクラシックコンサートファンへ満足していただけるライブ配信をお送りできたことは、この先、事業を展開する上での実績になりますね。
そもそもライブ配信のプロジェクトを始めた経緯としては、コンサートの「東京一極集中」が挙げられます。国内で年間に開催されるコンサートの半分ほどが首都圏、主に東京で行われていますので、地方の人にとっては機会が少ないのが現状。地方創生の考え方からも、もっと地方でコンサートに参加できる機会を生み出したり、むしろ地方でコンサートを開いて、それを配信するという発想が必要でした。
しかし、新型コロナウイルスにより、コンサートそのものを開催できない状況に。そんな逆境にあっても劇場やホールの関係者たちの「なんとかしてオーケストラの活動を発信したい」という熱い思いがあったからこそ、ライブ配信も実現したのだと思います。
クラシックコンサートの有料ライブ配信が安定的に行われることで、ホールや劇場の収益につながりますし、今後は無観客の公演以外も配信できれば、より多くのお客さまが1つのコンサートを楽しめるだけではなく、厳しい状況に置かれるコンサート施設を後押しできることも考えられます。もちろん、配信に解説の字幕を載せたりして付加価値のある動画などにすれば、ファンの満足度も上がります。今回の成功は、クラシックに関係する人たち全体にプラス効果を与えられる可能性を感じました。
そのように、ライブ配信には「チャンスがたくさんある」と実感できました。運営する側にも、落ち込んでいた業界の中で、しっかり成功へと走り切った充実感と達成感がありましたし「SmartSTREAM」のおかげで、配信インフラの心配はなくなりました。安定感のあるブランドに、細かなサポートと提案の手厚さ、現場でのスムーズな対応と、満足しています。これからも安心してサービスを利用したいと思います。
成功の一方で、我々としては、デジタルコンサートならではの課題に向き合っていく必要があります。クラシックの視聴者はシニア層がメインですから、自宅に再生環境が整っていない場合もあります。今後はスマートフォンにも対応していきたいと思いますが、現状はパソコンでの視聴を想定しているため、パソコンの操作方法や、視聴サイトへのアクセスなど、受け手側にも情報リテラシーが求められることになります。特に有料ライブの課金認証などが、その最たるものでしょうか。これらの問題は、すぐに解決できることではありません。重要なのは我々の情報発信です。デジタルコンサートの啓発活動を続けて、視聴のハードルを下げることが、クラシックコンサートのデジタル配信を発展させる第一歩と考えます。
今後の展望
動画の二次利用へ自社サイトを整備し、より質の高い配信をめざす
これまではクラシックコンサートの価値は「生音」にありました。「動画」に対して、ファンのニーズが低いことは現実問題としてあるでしょう。しかし、ライブ配信の価値そのものを高めて、配信の認知度をアップさせることで、チャンスがあると思います。
当然ながら、より高音質でクオリティの高いコンサート配信を聴いてもらう環境整備を前提としてですが、価値としては「配信ならでは」になる要素が必要不可欠です。先ほど少し触れました解説付き配信もそうですが、ユーザーとの双方向的なつながりが強みではないでしょうか。なぜなら、クラシックコンサートでは演奏者の挨拶やトークもないことが少なくなく、演奏者が「どのような思いを込めて演奏しているのか」「演奏する楽曲にどんな思い入れがあるのか」という内面的な部分に触れることは少ないためです。その辺りを配信で補完できれば、もっと楽しんで演奏を聴くことができるかもしれません。逆に、視聴者の反響やエールがダイレクトに演奏者へ伝わることも期待できます。単にコンサートを届ける、という視点の延長線を狙うのではなく、配信だからこそ可能な部分を追求することで視聴者も増えていくということです。
それに録画と違い配信には「自宅でコンサートに参加できる」という大きなメリットがありますから、収録された動画を後から視聴するわけではないので、そのリアルタイム性もアピールしたいですね。
認知度アップへの取り組みとしては、新しい顧客創出に向けて、なによりも広い情報発信が求められています。今まではクラシックに興味を持っていなかった若い世代などに、SNSなどを活用して、メッセージ性のあるPRを行いたいです。デジタル分野に関しては、若者の方がスマートフォンやタブレットなどで、ライブ配信文化に慣れているわけですから。私たちの情報発信をきっかけに、クラシックに関心を持ってほしいと思います。
また、具体的な今後のビジョンとしては、配信後の「二次利用」を見据えています。自社サイトのコンテンツを充実させて、クラシック業界関係者も、ファンも集まれるようなコミュニティをめざします。ストックになってしまっているコンサートの動画をウェブ配信したり、将来的には、サブスクリプションのような形で有効活用できれば嬉しいです。そのため、そういった部分でも、動画配信プラットフォームである「SmartSTREAM」を利用していきたいなと考えています。
配信でも音へのこだわりはなくなりません。会場に来られない方々に、納得していただけるクオリティの高い映像と音声を提供し、喜んでくれる人が増えるのが理想です。
※当記事に記載されている内容は、2021年4月現在のものです。